大崎甘奈が見えない日々
昔はよく甘奈が見えた
仕事が辛ければ辛いほど、逃避としてありえない幻を見ると人々は語る
けれども、私はそう思わない
辛い職場に甘奈はいない
終電の電車に乗るのはいつだって一人きりだ
『このまま、遠くまで行っちゃおっか…?』と呟く甘奈は、誰かの世界にはいるだろう
だが、少なくとも私の鼓膜は捉えたことがない
甘奈がいるときは、必ず一人分の余地があった
それは過去と未来から断絶され、物思いに耽るにはうってつけのものであった
余地ない生活が、決まり切った環境が、大崎甘奈を消し去った
もうどこにも見えない
誕生日にシャニマスを開いた時に、甘奈が私を祝ってくれた
その姿は余りにも久しく思えた