一升瓶の中の海月

気分で更新される思考の投函口

バーチャル蠱毒備忘録②

 

 

予選最終日 深夜

 

まずは何と言ってもくるぶし様の放送を見ようとした。

どうやらほぼレポート配信になっているとは聞いたがそれだけでは意味が分からない。

実情を知ろうとしたがどうやらこの時間には配信を行っていないようだ。この時にshowroomアーカイブ機能がないことを知り、溜め息をついたのを覚えている。

 

他の子を聞こうとして検索した時、同じ顔がズラッと並んでいて、しかも同じ外見のキャラが同時間に配信を行っていることにカルチャーショックを受けた。てっきり持ち回りで配信を行うものとばかり考えていたがそんなものは存在しないようだ。

予選最終日ということもあって配信が乱立し、私は四窓聖徳太子チャレンジをしながら様々な配信を巡っていった。

その中で気になった子が見つかった。一人目は巻乃もなかNo.6(以下もなむぅ)。もう一人は雨ヶ崎笑虹No.11(以下レヴ)。この二人だ。

 

もなむぅの配信に行った時、彼女は巻乃もなかの中で二位であった。

綺麗な博多弁を話す子で、アニメの博多弁キャラに付与されがちな天然さはなく、他の配信者がどれくらいの星を集めているのか、強いパトロンがいるのか、他の配信者の配信内容から勝ち上がりそうなのかを気にかけている、どちらかというとしっかりした計算高い子だった。

予選最終日なのにも関わらず、カウントや星を乞うことを率先して行わないのも好印象、他の子の配信とは一風変わった空気を纏っていた。もなむぅの配信を聴いていると秘密基地で作戦を立てるような気がして、めりめりしてきたことを覚えている。

ただ同時にリスナーによって好き嫌いがハッキリと分かれそうな子だということも感じ取っていた。芯のある意志には当然反発を持つ人も多い。

結果から言ってしまうと彼女は予選で八位になり本選に上がることは出来なかった。

 

予選を突破できる人間は上位五名、特別審査員賞が二名までの最大七人が本選に行けるのだが、彼女を含む巻乃もなかは接戦であり、六位から八位までの差は4000pt程度しか存在しなかった。一つ上の順位と大体普通は50000pt程度離れているのでかなりの接戦である。

もし七位までであれば特別審査員賞で上がれたのだろうが、八位までもつれ込んだこともあって巻乃もなかには特別審査員賞受賞者が存在しなかった。

予選結果発表近辺で、彼女は運営に対する意見を言ってのけたり、周到に転生の準備を行って転生を果たし、陰ながらバーチャル蠱毒を支える側に回った。

ただ彼女には悪いが、彼女の持ち味が存分に発揮したのは転生してからだと感じている。今も彼女は配信を行いつつ、この蠱毒を最後まで支えようとしている。

 

 

レヴちゃんと出会ったのは深夜の一時ごろだったと記憶している。

その時彼女は五位、ギリギリボーダーラインの上だったがのんびりとした配信をしており、歌をよく歌う子だった。今思えば自分が初めて聞いた配信が彼女の一番配信時間の長かった配信だったとは。

もなむぅとは対照的にどこか抜けた感じがあって、次回の配信予定等を言わずに終わることもよくあった。他には紛失物をふんまつぶつと読んだり、自宅の鍵を失くしていたり、神奈川が四国にあったりしたが。

なんというか、ほっとけない子でもあった。

 

彼女の魅力的な面は口では言い表せないが、でもなんだか純粋に配信を楽しんでいるようで、こっちも聞きたいと思うようになった。

 

少し前に触れたが、蠱毒に実際触れた人間は少ない。

それとコメントをあまりしない文化なのか、全然コメントが流れないので、コメントするとすぐ本人に拾ってもらえるため非常に距離が近い。過疎ったニコニコ生放送とでも言えるだろうか。

昔、会いに行けるアイドルとしてAKBが紹介されたが、そうとも言えるかもしれない。とりあえず、自分の推しに自分のコメントが拾われる、もしくはそれによって自身が認知されるというのは新鮮なもので、これが親しみやすさを良くも悪くも生む。

どの子の配信でも見る限りこの現象は起こっていた。

だから要するに蠱毒を見ていた者は皆、最初に手を出した理由は何であれ蠱毒にハマっていったのだ。